20s

壁に話しかけるような感じで

春と言ったら萩原朔太郎

「春は遠くからごむ輪のくるまにのつて来る。」

「かずかぎりもしれぬ虫けらの卵にて、

春がみつちりとふくれてしまつた、

げにげに眺めみわたせば、

どこもかしこもこの類の卵にてぎつちりだ。

桜のはなをみてあれば、

桜のはなにもこの卵いちめんに透いてみえ、」……

私は桜の花のことが少し気持ち悪くて、

それは「みつちり」としているからで、

この詩のとおり、ぎっしりと並んだ虫の卵をふと連想してしまうからだ。